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2008年08月24日

診療の合間に 風邪と感冒

“風邪”というのはとても身近でしばしば遭遇し、奥の深い問題だとかねがね思っています。“風邪”は医学用語ではないことはご存知の通りです。医学辞典には、“感冒”“かぜ症候群”“上気道炎”などとなっていますが、通常の会話では、「昨日、感冒になってね」とは、言いませんね。「昨日、風邪を引いてね」と言います。医療従事者同士の会話でも、“風邪”派が大部分だと思います。
 玄人と素人の語法の違いでは、“盲腸”と“虫垂炎”有名ですが、こちらは、通常の医療従事者同士の会話で“盲腸”ということは、まずないのではと推測します。
 “風邪は万病のもと”“お腹の風邪”“風邪で体調を崩し還らぬ人となられた○○さん”など様々な場面で風邪は登場します。因みに最後のフレーズは弔辞の一部です。
  風邪と腹痛はもっとも頻度の多い症状です、後者は“腹が痛い”という症状を表現しているので、簡明なのです。風邪も指し示してる内実は、腹痛に近いのですが、あたかも疾患名のようにも使われているのが、特異的なのです。
 一般の人は様々な体調の変化を感じ様々に表現しているのですが、医学という専門性を通過すると、明確な定義のもとに様々な専門用語が貼り付けられ、一般の人にはよそよそしい世界となります。風邪はこうした、問題を象徴しています。
 また普通の人にとっては、頻度からいっても、深刻さから言っても重要である風邪が医師の世界では、重視されていないというそのギャップも興味深いことです。風邪の専門医師とは、気道のウイルス感染の専門医師ということになりますが、風邪を引いたから風邪の専門医に診て貰おう考える人はまずいません。
いつもながら御託が多すぎるようです。以下にポイントをまとめます。
①感冒は、医学的には、上気道(鼻、副鼻腔、咽頭、喉頭 時に気管―気管支)の急性炎症である。原因の8割以上はウイルス。時に細菌、アレルギーなど。
②感冒は、急に生じて、永くても2週間以内に治癒する。直らないとか、重くなるのは医学的には、他の病気が続発したということ。例えば、感冒から喘息を併発したなど。
③感冒を直す、薬はない。風邪薬は風邪の症状を軽減して、治癒までを過ごしやすくする薬のこと。
④薬には副作用の心配もあるので、感冒の時は、暖かく安静にして、薬は飲まないのが、一番得な方法だが、本当にこの風邪は感冒なのか?薬で症状を軽減し、仕事や遊びを続けたいなど、人それぞれなので、医者にかかるのは、やはり意味がある。
⑤典型的な経過を辿りつつある風邪は心配ないが、ヘンな経過を辿り始めると要注意。それを察知するためには、自分の風邪の通常の経過をよく観察して記憶に留めておくとよい。
  


Posted by 杉謙一 at 16:03Comments(0)

2008年08月23日

診療の合間に 血圧問題

 糖尿病の患者さんに、インスリン注射での、単位数の問題や、自己血糖測定の回数を説明しているうちに、かなりのエネルギーを使って、「ということで、では次回」という感じで切り上げようとしたところ、「先生、まだ血圧測ってもらってないですけど」と1本取られる。
 私は、原則として、診療した患者さんの血圧は自分で測るようにしている。若くて、BMI 18前後の痩せた女性が風邪で受診された時などは、測らないが。
最近では、受付にプリンター付きの自動血圧計を設置して、プリントアウトされたものを持ってきてもらうというスタイルもあるようだが。
 自分で測っている理由は様々だが、患者―医師 のコミュニケーションツールと思うし、この方の“真の血圧?”を察知したいという考えもある。
“真の血圧?”というのは、測るたびに違う血圧という前段階がある。
 以前、患者さんと対話していて、「そうだったのか!」と気づいたのだが、血圧にナイーブな一般人には、血圧を連続して測定すると、いつも同じ数値を示すと考えている方がいるのです。白衣姿の医師や看護師が水銀血圧計で、測るとさぞかし正しい数値が開示され、2回目、3回目も同じだろうと考えておられるのです。
 私の血圧についての、患者さんへの情報提供(患者教育)は、実は血圧は測るたびに違うということを、患者さん自身の、血圧測定を通して知っていただくことから始まる。
 実は、杉内科クリニックの待合室にもプリンター付き自動血圧計が設置してあるが、その本意は、私の血圧測定を省略するためではなく、測るたびに異なる血圧値を確認してもらうことなのです。
この段階に行くと、当然患者さんから、「私の真の血圧は?」という質問が出てくる。その疑問が生じるのを待っているのです。
そこから、高血圧は何故悪いのか、血圧を下げるとどんな得があるのか、など様々な世界が開けてきます。
 血圧にナイーブな一般人から、血圧についてすれっからしのしたたかな高血圧患者に、このプロセスをお手伝いするのが、高血圧治療だと思うのですが。
とカッコいいことを書きましたが、単に今は、暇だから、せっせと自分で、血圧を測っているのかもしれません。
  


Posted by 杉謙一 at 05:42Comments(0)